S字フック
母親の部屋には、長短合わせて十数本のS字フックがぶら下がっている。賑やかな壁面空間。フックには、普段使いの上着やバッグ、取り込んだばかりの洗濯物がかけてある。
以前は、タンスの中にその都度しまっていたのに、「引き出しを引いたり押したり扉の開閉をしたりするのが手間になった」とか。筋力が落ちてきているのだろう。それに、「若い頃より背が4~5cm縮んで、昔届いたところも届かなくなった」とか。さらに、「最近は転びやすく、つい足下に置いてしまってつまづいて転ぶといやだから」とか。
ちなみに母は、今、145cm。時には、昔洋裁で使っていた1mの竹尺を器用に使って、天井近くにつり下げられた物を下ろしたりかけたりしている。S字フックは好きなところにかけられると重宝しているようだ。
「これよりもうちょっと長めでピンク色ないかな」と母。まだまだ増やすつもりだ。少々目障りなS字フックだが、母の転倒予防対策、快適な暮らしのための工夫かと思うと、つい百均ショップでさがしてしまう。